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～心残りは仮面ライダー～


 


      
2004.8.6

日記に良く出てきた迷惑女Sが日本郵船のテストに受かったらしい。

メールが夜中にいきなり届いてね。

大変です。

お船から連絡きたー

来月アメリカ行けるみたい

アラスカよ。

だってよ。

奴ぁ１年くらい前から豪華客船のクルーのテスト受けてたんだよな。

ヨカッタナァ。

んで、体調最悪だったんだけど話をききがてら、

エビを食いに『らく～あ』へ行った。

久しぶりに会ったSはゲンキンなモンで、

お肌ツヤツヤの笑顔サンサンでやんの。

夏バテで蒼白な不敵を尻目にヤツはその嬉しい心中を、

油を塗ったような舌でペラペラしゃべりやがる。

話はSの韓国旅行に飛んで、

『アタシずっと試験の結果聞けなくて腐ってたのよ！

会社は先に辞める準備しちゃったのにさぁ。

だからウサばらしにM（専門学校時代からの友人）と韓国いったの！』

なんて話し始めた訳ね。

『ハァ、そらさぞかし空港からキムチ臭かっただろうなぁ』

ヤツがなにを見たかったのかと言うと。

『アタシ38度線みてみたかったの！！』

不敵は思わず、まじまじと。

そのツヤツヤした、緩みっぱなしの顔を凝視してしまった。

そんな不敵に彼女は大きな誤解の念を持ったらしい。

『…38度線って知らない？』

『知らない訳なかろーが。ヘタすりゃ撃ち殺される所だろ』

なんでも、一度見てみたかった所なんだそーだ。

国連だかなんだかしらねぇが、

『俺達は射撃対象じゃありません』

っつう意味を為すバッチをつけてモノモノしい雰囲気の中、彼女は

『…足半分だけ北朝鮮に突っ込んできちゃった～♪』

と、スリルを楽しんできたらしいぞ。

不敵はますます不愉快に拍車がかかった。

だって向こう…

すぐソコには飢えた子供達がわんさか、

リアルタイムで苦しんでいるんだろう？

それを無神経に珍獣パンダ見学みてぇな心境で

見に行くって、

楽しめる、

っつう神経が不敵には全く理解出来ない。

冷やかしに行くと同じ意味だと思うのだがアタシの気のせいか？

それ以前に、

そーゆぅ悲惨な地域を遠くから見せ物にして金もうけするってな、

その…誰の根性かしらんけど、そーゆうのが気に入らないねぇ。

でもSを始め大部分の観光客は全然そんなトコまで考えちゃいねぇんだ。

今の日本じゃ、アタシみたいなカタブツ思考はそれこそパンダ並みかもしれん。

そうは判っていても、

どーにも気に入らねェ。

んで、不敵の体調の悪さにトドメをさしたのはコイツだった…

…あぁ、呪われてあれ、アイス・チョコレートケーキ。

忘れはしない、こいつのチョコにあたった不敵はそれから

長い道程の夏バテ街道をひた走る事となるのであった…。

（Sもあたったらしい）

猛烈な胃部不快感でねぇ、コッチまでずっと引き摺ってンの。

もー絶対、しばらくチョコ食べれないわァ！！

Sは８月末からアメリカに渡り、そこからアラスカ周遊の

豪華客船のクルーとして航海の旅に出るんだそうな…。

『冬もアラスカかい？』

『…うっふっふ、冬はカリブ海よ～ん』

それは羨まスィ…しかし彼女には大きな『思い残す事』が存在するのであった。

それは…

仮面ライダーブレイドを

見れなくなってしまう事であった！

Sは剣崎君ファンなのである。

要するにミーハーなのである。

そこはアタシと一緒だな。

結局、彼女が帰ってくる来年１月まで不敵が録画しておくハメに。

最後はオタクネタでしめてしまってスンマセンでした。

ま、Sがいなくなってこれで日本も少しは静かになるな。

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