ヲ
〜しじみ。〜
『おまえは放って置くと好きなものしか食べない』
かーちゃんはそういって、
いい年した一人暮らしの長女に様々な食材を持ってきた。
なんだか緊急物資って感じだ。
(…いや…その、一人じゃ食べきれないし)
(なんせ少しでお腹一杯になってしまう今日この頃なんデス)
などというテメェ勝手な感想は胸の中にしまって、
とりあえず食材を有り難く頂戴する。
その中に『しじみ』があった。
涸沼産らしい。
『しじみなんてお前食べないだろう。食べなさい。
真水に隠れるくらいに浸して砂をちゃんと抜くんだよ。
暗所に一晩、あけたらしっかり洗って食べるか冷凍なさい』
わざわざ電話してまで、かーちゃんはそう言った。
あたし、『しじみ』とか『あさり』は嫌いじゃないッスよ。
でも自分で料理するとなるとなぁ。
なまじっか、生きてるからなぁ。
朝、真水にひたした『しじみ』を観察する。
『しじみ』はほんの少し貝殻を開けていて、
しどけなく(?)その白い肢体の一部をはみ出させているのだった…。
それを水道水でガシャガシャ洗ってやると、
『しじみ』の皆さんは行儀良くその貝殻を閉じるのだった。
不敵は思った。
カワイイ…生き物はけなげだよなぁ。
ぐらぐらお鍋でゆでるのが酷く罪深いような気がしてならない。
よく生きたままの海老を天ぷらでバリバリ揚げちゃったりして
それを女性が美味しそうに食べたりとか、
生きてる刺身で食べると刺身が口の中で動くとか、
テレビで気持ちよ〜く放送してるのを見ると、あたしゃゲンナリするのだ。
自分があんなメにあったらきっと成仏デキネェ。
とりあえず食わなくても生きていけるのだから、
今後あたしはこいつを好き好んで買うことはするまい。
…『しじみ』をぐらぐら鍋で煮ることは極力避けたい。
なんとなくそう考えながらひっそりと『しじみ』を冷凍室にしまう不敵でした。
とりあえず味噌汁かな。赤味噌が合うよねぇ。
…アフォな日記でゴメンナサイ。
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