January
ヲ 〜店長に怒りの鉄槌を〜

2004.1.31

不敵はメタラーのクセに全然メタラーくさくない。

あえていうなれば、『地味なオバサン』といえよう。

そこで、である。

来週に行われるザイクロンのライヴを見越し、

ちょっとだけメタラーっぽくなろうと思った(何のこっちゃ)。

話が脱線する事を御容赦願いたい。

不敵は○年前、新宿のゲ−ム会社で働いていた事がある。

そこではよく徹夜寝袋ホテルカンズメという、

激しく笑えない状況が毎日のように繰り返されていた。

…思えば濃い系メタルやアメコミの手解きをうけたのもそこだった。

その会社の給料は銀行振り込みだった。

ある日の給料日。

その日、ド貧乏な社員は全員無一文だった。

普通だったらお金をおろしに銀行に行く。

の筈だったが…

運の悪い事にその日の天候は、

爆風とも言うべき脅威の嵐だったのだ!!!

窓から見下ろす新宿の光景は凄まじい様相を呈していた。

看板が突風に吹き飛ばされ、道行く者は真直ぐ歩く事も叶わぬ。

突風により木の枝や訳の判らぬガラクタが

遠距離(ロングレンジ)攻撃アイテムとして空中を乱舞しまくる。

外を出歩くには非常に危険な状態であった。

社員は困り果てていた。

『お金おろしに行けない…食事に行けない…』

そんな状況の中、不敵は果敢にも(自分で言うな)決断するのだった。

『私が銀行に行きます!!』

不敵は会社で一番下っ端だったし、無謀な事は大好きだった。

髪の毛をギュッと一つにしばり、

(この大嵐の中、傘などハナからさすつもりはない)

汚れてもイイようなジーンズ+Tシャツで外出しようとする不敵に、

同僚のパンク好き友人Nはこう言った。

『不敵さん、危ないから革の鎧+1を着ていきな?貸してあげるから』

ちなみにパンク好き友人Nは不敵に負けぬウィザードリィ好きであった。

『えっ!革の鎧+1!?』

不敵は瞬時に盗賊の装備する貧相な鎧をイメージしたのだが。

手渡されたのはパンク好き友人N愛用のライダースジャケットだった。

ズッシリ重ッ…なるほど、コリャ確かに革の鎧だぁ。

その時不敵が着ていたTシャツがANTHRAXだったので同僚から

『不敵さん、メタラーだね〜』

と生暖かい声を浴びせられる事となるのだった。

…という記憶があるし。

革の鎧+1を買いに原宿へ行って来た。

前回、スキンレスのライヴで不敵は腕にアザを20コ近く作った。

しゅごい腫れて痛かったの。

来週のライヴで革の鎧+1さえあれば、きっとそんなの出来ない筈だ。

原宿に行くのは…何年ぶりだアタシ?

原宿の町は記憶のソレと全く違う様相を呈していた。

うわ〜ん!!

お気に入りのカフェがビルになってるゥ!

『かわうそ屋』が消え失せてる〜!

『コスモスペース』もねぇ!

キャッシュディスペンサーはどこ消えた!

同行のMちゃんと迷いながら…いろ〜んなお店に浸入してみた。

トテモおもろかったです。

パンクって盛況なジャンルだったんですね。

ラファエルって何?

修道女のコスプレ?

パンクって可愛い服着て楽しむジャンルだったんですね。

もと黒服追っかけのMちゃんはすっかり御満悦の御様子。

『これいいな〜!これ可愛い〜!』

…まだ黒服追っかけの遺伝子が記憶の隅に残っていたんですね…。

そんなこんなしながら。

辿り着いた鎧屋さんは、竹下通りの外れにあった。

店主のお兄さんは、親切らしく色々革の鎧+1について教えてくれる。

『ヨーロッパのとアメリカのタイプがあります。

欧州版はスッキリデザインで米国版はゴッツイデザインです』

革の鎧+1にも色々いわれがあるらしい。

何でもガッチリ米国版は、なで肩のヒトに良いんだそうな。

不敵は思った。

『私はなで肩だから米国版の方が良いのかしらん』

『いえ、あなたの肩は凄くガッチリしてますよ』

一瞬の隙もなく横合いから言われた台詞に不敵は愕然とした。

(…あ、あ、あたしって…ガッチリだったのか…!知らなかった…!)

衝撃の余韻(?)に口をパクパクさせる不敵を尻目に、

続けて店長は恐ろしい事をMちゃんに発言するのだった。

『お水の貴方にはこっちの方が似合いますよ』

『あたし水商売の女じゃありませんッ!』

イキナリレッドカードな発言をナチュラルにかます店長と

凄い剣幕で反論するMちゃんに、たちまち不敵は蒼白になった。

どうやら今年初めに美容院でかけたどギツいパーマが、

Mちゃんのイメージをそのように仕向けているらしい。

店長は飄々とした様子で

『またまた(笑)そんな嘘を言って…』

『こう見えてもれっきとしたOLですっ』

店長は全然信じていない様子だった…ので、不敵も釈明に参加する。

『本当ですよ、普通のOLです』

店長は不敵とMちゃんを交互にシゲシゲと見比べて、こう述べた。

『一体お二方はどういった繋がりで…』

よほど不敵とMちゃんの関係が気になったのだろう。

確かにアタシはメチャンコ地味だしMちゃんはド派手だ。

『話せば長いのですが。今はお互いの勤め先が取引先同士だったりします』

『医学書の出版関連なんですけどねぇ』

『そんなオカタイ仕事しているようには…Mさんは水商売、

不敵さんは運送会社の

事務員かと思いました』

思わず不敵は目を剥いて絶叫しました。

『ナンじゃそりゃあー!』

全くワケわかりません。

この店長はどうやら不敵がゴツイ筋肉マッチョ系と認識しているようです。

なんだかすンゲー心外です。

プロレス系イカツイ女だと言われたようで不敵はハゲしくヘコみました。

もっとも、

水商売の女と言われたMちゃんの方が怒ってトーゼンな感じですが。

畜生!店長め!呪ってやる〜!

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