March
ヲ 〜不敵、電車を止める〜

2003.3.910
今日も普通に出勤だ。

いつも通りの時間にいつも通りの電車に、車両に乗る。

不敵はSさんに借りた漫画『悪魔狩り』(エニックスコミックス)

を読みつつ満員電車に立っていた(つーかそんなモン読んでんなよ)。

あんまり電車で読まないんで、久しぶりだなと。

『…このベルセルクの二番煎じぶりがいっそ清清しいな』

そんな事を思っているウチに電車はA駅に近付いて行った。

この駅はターミナルで朝はホームに次の電車を待つ人間が列を成す。

と、不敵のナナメ左前に座っていたおじさんが、

とつぜん白目を剥き、顎をあげ、

両手両足を伸ばし、

ガタガタ震え出した。

無意識の内に不敵は『悪魔狩り』をパタンと閉じていた。

咽の奥でカエルを踏みつぶした時の鳴き声のように

『ケッ、ケッ、クケッ』

なんて言ってる。

周囲の人々はただただ、呆然と見つめている。

しばらくすると、顔を少々左に傾け、

ぐったりしてしまった。

伸ばされた左手が我々に向かって

ピクピクと小刻みに震えてる。

脳卒中か、脳血栓か、脳硬塞か。

ホントにそうだとすれば命に関わる可能性も有り、

コトは一刻を争う。

頭の中で勝手に自己完結した不敵は、

回りの大人達が誰も動こうとしないのを感じたんです。それで、

『…病気だ、車掌さんに知らせなきゃ』

と、猛然と電車を飛び降り、

ホームに列を成す人間の目前を、

『悪魔狩り』を片手に短距離ダッシュ。

畜生!恥ずかしいなんて思ってられる場合かよ!

むざむざ何もしねぇで目の前で誰か死んだりするのは絶対イヤダ!

でも本当に恥ずかしかったんです。

先頭車両の運転席ヨコに辿り着く。

…えぇ、力一杯窓を叩きましたとも。

『待って!行かないで!急病人です!』

もう本当に恥ずかしかったんです。

駅員に窓の向こうからココデスとケイレンオジサンを指差す。

しかしオジサンは既に意識が戻っており、

コッチを向いてみてるじゃねーか。

オイオイ、私の恥かきは無駄骨かい!?

駅員さんが車内に行くのを確認し、

不敵はあまりの恥ずかしさに隣の車両へ逃げ込んだ(号泣)デス!

というわけで電車を止めてしまいました、私。

でももしあの場でオジサンが死んじまったら。

そう思うと…、また同じ場面に遭遇したら

ヤッパリ短距離ダッシュやっちまうなぁ。

でも悪魔狩り片手にってのはもう止めよう、自分。

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